国内外から多くの人が訪れ、今や日本を代表する観光地の一つになった高山市。4月4日の夜には、歴史や文化が息づくこの町を東京五輪の聖火が照らす。コースになった古い町並みに60年以上住み続ける、市上三之町町並保存会会長の大野二郎さん(78)=同市上三之町=は「よくぞここを選んでくれた。魅力が世界に伝われば」と喜ぶ。
上一之町、上二之町、上三之町の辺りは1979年、重要伝統的建造物群保存地区に選ばれた。高山藩を治めた金森氏の高山城建設と共に歴史が始まり、江戸時代には商人の町として栄えた。
65年ごろ、住民の間できれいな町並みを残そうとの機運が高まった。後に立ち上がった同会の当時の規約には「良き伝統を生かし、(中略)美風を後世に遺す」と目的を定める。明治中期を基準に建物の格子や店の看板、照明などについて細かく申し合わせ事項を決め、掃除や防災を徹底する。大野さんは「一番大切なのは住んで保存すること。高山の誇れる場所として子どもや孫の代まで伝えたい」と強調する。
十数年前から、外国人観光客の姿が目立つようになった。「町に溶け込む感覚が味わえるから来てもらえるのでは。だからこそ景観の保全に手抜きはいけない」
時代と共に変わる五輪と、昔の趣をとどめる町-。「ここの歴史が現代の五輪を引き立ててくれると思う。どんな風に通るか楽しみ」。ほの暗い町並みに映える聖火を思い浮かべながら待ち焦がれる。
岐阜新聞
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